2020/10/26[mon] update

【活性の火'20】フェスレポート

小さくても熱い火を灯せ!コロナ禍で成功を収めた活性の火の挑戦

苫小牧の中心街ににぎわいを取り戻すムーブメントを起こそうと、2014年にスタートした野外フェス「活性の火」。
シゴトガイドでは協賛という形で毎年、開催を応援しています。今年は新型コロナウイルスの流行が収まらない中、実行委員会では開催の是非を巡って論議を繰り返してきましたが、例年より1カ月遅れでの開催を決断。
去る9月27日、秋晴れの下で行われた活性の火’20の模様をレポートします。

【事前インタビュー】
ギリギリまで迷った開催の是非

活性の火’20 実行委員長
杉村原生(すぎむらげんき)さん
コロナ禍での開催に踏み切った訳は?
準備が本格化する前に新型コロナウイルスが流行し、情勢を見定めながら開催の是非を検討してきました。最終的に、営利目的ではなく中心街の活性化という大義名分を掲げるイベントとしては、規模がどうあれ開催することが大事という結論に行き着きました。

周囲の反応はどうですか?
地元を中心に活動し、いずれも昨年出演経験がある14組のバンドが「今年も活性に出たい」と言ってくれました。これはイベント自体に良いイメージがあってこその成果だったと思います。また、行政や協賛企業の方々にも「こういう時だからこそ頑張って」と賛同していただき、感謝しかありません。その思いを受け止め、新しいスタンダードを作るつもりでベストを尽くします。

具体的にどんな対策をしますか?
通常なら2日間、入場無料で飲食ブースも楽しめるイベントですが、今回はソーシャルディスタンスを確保するため、会場の収容人数が約1000人に対して300枚限定でチケットを発売します。オリジナルマスク付きで1000円をいただきますが、利益を上げるのではなく前売りすることで、来る準備のある人だけに来てもらうのが狙いです。また、入場の際には健康チェックをしっかり行い、会場での滞留を控えてもらうために休憩スペースは設けていません。最悪ルールが守られなければ途中で中止もやむを得ないと考えています。

活性の火'20への意気込みを
7年目の活性の火はいつもの年とは違う形になりましたが、若い世代に物や財産ではない、目に見えない意志を伝えるのが僕らの使命。誰もやっていないからと臆するのではなく、音楽の力とお客さんを信じ、チャレンジすることにこそ価値があります。聴衆や演者が楽しむだけでなく、ルールやマナーをしっかり守ってもらい、活性の火を見守ってくださる皆さまにとっても安心・安全なイベントになるように頑張ります。

【当日レポート】
万全の対策で体調チェック

今年で7回目を迎えた活性の火。会場は昨年同様、苫小牧の中心部にあるイベント広場・若草中央公園だが、今年はちょっと様子が違う。来場者はまず入り口で検温し、体調をチェック。北海道コロナ通知システムへの登録を確認し、チケットの半券代わりとなる専用マスクを受け取って入場となる。エリア内では専用マスクを外すことはできない。「火」の文字をモチーフにしたオリジナルロゴ入りマスクは「着け心地がよくてカッコいい」と評判は上々だ。スタート時間が近付くにつれ、会場はおそろいのマスク姿の人々で埋まっていく。
午前10時前、メインステージでのオープニングがスタート。毎年好天を運ぶ“晴れ男”を自負する岩倉博文苫小牧市長が登壇する。岩倉市長は「コロナ禍にある今年は実行委員会の皆さんが悩みに悩み抜いての開催。その決断に大きな拍手を送ろう」と会場に呼び掛け「こうしたイベントの実績を一歩一歩積み重ねていくことが大切。ルールを守って、活性の火の実績を皆さんの力で作ってほしい」とエールを送った。続いて、杉村実行委員長が「開催するかすごく悩んだが、もともとまちを少しでも良くしたいと挑戦する気持ちで始めたイベント。ここでやめるという選択ではなく、しっかり感染対策をしながら安心・安全に楽しめる形にしたので、注意しながら最後まで楽しんでいただきたい」と訴えると、会場からは賛同の拍手が沸いた。

距離を保ちつつライブ感を満喫

オープニング終了後、間髪を入れずサブステージのパフォーマンスが始まる。「待っていました!」とばかりに観客がステージ前に移動する。1年ぶりに中心街にこだまするロックな音楽、地を伝わって体に届くドラムのリズム。コロナ禍で全国的に大小あらゆる野外フェスが軒並み中止される中、この感覚をファンはどんなに待ち望んでいただろう。待っていたのは聴衆だけではない。ライブハウスへの営業自粛要請で活動の場を失ったバンドも同じだ。MCで活性の火の開催に感謝の言葉を寄せる。
ソーシャルディスタンスをキープするため、スタンディングエリアの地面にはピンク色のテープが打ち込んである。ボランティアスタッフが一つひとつ正確に距離を測り、手作業で準備したものだ。タイムテーブルの進行と共に続々と観客が入場し、場内は徐々に密度が高まり、熱を帯びていく。それでも、観客同士が密になることはなく、マスク着用のルールもきちんと守られている。寿司詰めの観客が波打つフェスならではの景色こそないが、生の音楽を楽しめることに変わりはない。イベント業界が模索する野外フェスの新しい形がそこにはあった。

また来年、ここで活性の火を灯そう

例年なら会場には地元の味を楽しめる飲食ブースや休憩スペースがあるのだが、今年は会場内での飲食は禁止。ステージを見ながら飲食ができないため、午前と午後の間に1時間弱のインターバルを設けた。来場者らは駐車場の車内や電子パンフレットに紹介されている近場の飲食店などでそれぞれ昼食をとっているようだ。
そして午後2時35分、パフォーマンスが再開される。好天のスタートから気温は徐々に下がり、例年よりも1カ月遅れの活性の火を肌で感じる。それでも、今年最初で最後となる野外フェスを惜しむように、聴衆たちは上着を着込みながら拍手を送り続ける。
そんな熱い一日もいよいよ午後5時、終演を迎える。閉会式で杉村実行委員長は「このような社会情勢の中、活性の火に立ちたいと言ってくれたバンドのみんな、地域のために活性の火を開催してほしいと力を貸してくれた企業の皆さんにお礼を申し上げたい」と感謝の言葉を述べると、会場に残った聴衆から温かい拍手が起こる。いつもなら「アクティブファイヤー」の掛け声で拳を振りかざすが、今年は「来年もどんな状況か分からないにせよ、挑戦は続けたい。ぜひまた来年皆さんと、活性の火で、ここで会いましょう」と静かな締めくくり。会場にいるすべての人たちがこのコロナの終息と、本来の形での活性の火が戻る日を祈った瞬間だった。

【会場で聞きました】
やっぱフェスって最高!

こうへいさん、ひなたちゃん、あんさん(札幌市)
もう5回くらい来ていて、今年は初めて子どもを連れて来ました。久しぶりのライブでいい感じです!制限はあっても楽しめました。音楽ってやっぱりいいですね。
くにかさん、しおりさん(滝川市)、ゆうじさん(旭川市)
フェスが全部中止になっている中で、活性の火をやってくれてありがたいです。
今年も生音が聞けて良かった。来年もぜひ来たいと思います。
さゆりさん、あきひろくん(札幌市)
ずっと親子で来ています。ステージの前まで行けないのはもどかしいけれど、好きなバンドを見ることができて良かったです。毎年有料でもいいと思っています。
かなみさん、みくさん(苫小牧市)
コロナなど関係なく楽しめました。これまでと形式が違っても、今年も活性の火を開いてくれて良かったです。来年はマスク無しで、みんなで声を出して楽しめたらいいですね。

【事後インタビュー】
withコロナで楽しめる野外フェスを目指したい

今回の活性の火をどう評価しますか?
コロナ対策を含め、ほぼ計画通りに進めることができました。オペレーションはほぼ未経験のボランティアが行うのでちゃんと稼働するか心配しましたが、幸い入場のタイミングが集中せず、スムーズに対応できたと思います。実行委員会からの呼びかけで、ソーシャルディスタンスや飲食の自粛など、お客さんにも協力していただき、オリジナルマスクも再入場の確認の際に分かりやすく、野外イベントの1つのケースとして成功させることができたと思います。

イベントの波及効果はどうでしょう?
例年のように大勢のお客さんが中心街に流れる仕組みではないので、地域活性化の呼び水になったとは言えないですね。ただ、今回はいかにして300人のお客さんを楽しませるかが焦点だったので、満足感はあります。それでも、遠方から来た人が地域で食事をしたというTwitterの書き込みがあり、地域に小さな火種を提供できたかもしれません。

来年に向けた抱負をお願いします
もともと「何かやってやろう」という反骨精神からスタートしたイベント。この状況下で活性の火をうまくつなげられたことは良かったとしても、今後もこの規模では違和感があります。
2019年までの規模感で地域に影響力のあるイベントを行うのが理想ですが、残念ながら来年それを復活できると明言はできません。それでも、活性の火を通じて中心街に人を呼び込むことを諦めずに、今回の経験から完成形を作りたいです。活性の火が安心して楽しめるイベントとして受け入れられ、全道各地でも野外フェスが再開されれば、それがwithコロナの形なのかなと思います。